サイトーク

サイトイの語れるだけ語るブログ。ジャンルは★ロック★映画★文学★

<書評> ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子さんと不思議な客人たち~

古書店主・栞子が娘の扉子に本にまつわるエピソードを語ります。
『ビブリア古書堂の事件手帖』のシリーズ完結作の後日譚で、
栞子が結婚し、その七年後から始まります。2018年秋が舞台です。

第一話 北原白秋 与田準一編『からたちの花 北原白秋童謡集』

強盗事件を起こした前科者の昌志と、兄・和晴の家族の間に起こった哀しい事件の真実をめぐる物語。

  からたちのそばで泣いたよ、みんなみんなやさしかったよ

昌志が上記のの歌詞に対して、
「誰かの優しさに触れたから、誰もが優しかったと思うことに決めた、わたしはそういう意味に解釈している」

人の悪意に触れて傷つき追いつめられた昌志の生きていくために必要な言葉だったのかもしれない。
人のぬくもりがじわっとにじみ出る物語でした。
無理にかかわりを持てば壊れてしまう人間関係の危うさと奥深さを感じられる物語でした。

『からたちの花 北原白秋童謡集』には、装丁が2種類ある。
1957年の新潮文庫と、1993年の復刻版があり、装丁が大幅に変わっている。

第二話 『俺と母さんの思い出の本』

磯原未喜の依頼を受け、大輔とともに未喜の亡き息子・秀実の「母さんとの思い出の本」をさがす物語。

自分の思うようにはいかない、けれどそれはそれで、人として認めていくべきことなのだという感想。
本を贈り贈られるということは、人とつながることができ、またその周りの人もつながっていくというということなのだなと思いました。いつか自分が贈った本や贈られた本もそんな物語が紡がれるとうれしい。

第三話 佐々木丸美『雪の断章』
せどりするホームレスの志田と本でつながった仲の高校生、小菅奈緒。志田はある日忽然と姿を消すことで、男子高校生の紺野佑汰と出会う恋物語。
この物語を読んでいるときに、ふと、誰かのために一生懸命本を読んだ記憶が自分の中にあるのか、を探してみた。
しかし、好きな人のために必死に勉強していたことを思い出しました。そういう甘酸っぱい記憶を思い出す物語でした。
ミステリー小説『雪の断章』を読んでみたい。

『雪の断章』の講談社版のハードカバーには作者のあとがきが収録されているが文庫版には収録されていない。
作者の没後にほかの出版社から復刊された版に収録。

第四話 内田百閒『王様の背中』

舞砂道具店の吉原孝二の稀覯本奪還劇。ことわざみたいな話ですね。

 

内田百閒は大正末期から長く活躍した作家。怪談じみた短編小説やひねくったような可笑しさのある随筆で有名。絵入りの童話集の刊行は昭和9年。限定の特製本は価値が高い。本をくるむ帙(ちつ)があるのは特製本。
価値が高い理由は、文章ではなく、挿絵の版画。棟方志巧(むなかたしこう)と並ぶほどの評価を得ていた谷中康規(たになかやすのり)による色付きの手刷り版画が二十枚ほど差し込まれている。
版画がすべてそろっていれば五十万以上の価値がある。
見返しに限定番号が付いている。