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夏目漱石『坊っちゃん』~あらすじを読む~ 

『坊っちゃん』は、一から十一章に分かれています。1906年(明治39年)、『ホトトギス』第九巻第七号(4月1日発行)の「附録」(別冊ではない)として発表されました。

 

登場人物

坊っちゃん

この作品の主人公。下女である清がが主人公をこの呼び名で呼ぶ。野だいこから「勇み肌の坊っちゃん」と作中で言われる。

性格が、無鉄砲で頑固なところがある。

 

坊っちゃんの家の下女。坊っちゃんを気に入り、可愛がる。坊っちゃんが四国の学校に赴任中も手紙のやり取りをし、坊っちゃんが東京に戻ってから下女として坊っちゃんの家に置いてもらう。

 

坊っちゃんの兄。坊っちゃんと、仲が良くないので、父親の死別以来会っていない。

漱石には4人の兄があり従来、「色の白い鼻筋の通った美しい男」(『硝子戸の中』)であった、長兄の風貌の投影が指摘されている。

しかし、ここでは好意を寄せた長兄とは違って敵役となっている。

引用元:『漱石全集』<第二巻> 「倫敦塔ほか・坊っちやん」注釈

 

山嵐 

数学の主任教師。正義感の強い性格で生徒に人望がある。坊っちゃんと仲違いもあったが、友情を深めていく。 


赤しやつ

教頭。坊っちゃんの学校でただ一人の帝大卒の文学士。マドンナを手なずけて婚約者のうらなり君から横取りする。陰湿な性格で、坊っちゃんと山嵐と敵対関係になる。

講演『私の個人主義』で、赤しやつは漱石自身のことであると言っている。

引用元:『漱石全集』<第二巻> 「倫敦塔ほか・坊っちやん」注釈 

 

野だいこ

画学教師。東京出身で坊っちゃんに親しげに声をかける。赤シャツの腰巾着。「でげす」と語尾につける喋り方をする。

野太鼓。吉原以外の地で働く幇間、また、しろうとが内職でしている幇間を蔑んでいう呼称。

でげす:「でございます」の転訛(てんか)。通人、幇間などが好んで使った言葉。

引用元:『漱石全集』<第二巻> 「倫敦塔ほか・坊っちやん」注釈 

 

うらなり君

英語教師。お人よしでいい人。マドンナの元婚約者であったが、赤しやつに左遷される。

うらなりの唐茄子:うらなりは伸びたつるの末(うら)になった実。本成(もとなり)の対。

唐茄子はかぼちゃのこと。栄養が行き届かず青白いかぼちゃを、元気のない人にたとえたもの。

引用元:『漱石全集』<第二巻> 「倫敦塔ほか・坊っちやん」注釈

 

マドンナ

ここいらで一番の美人。うらなりの婚約者だった。現在は、赤シャツと交際している。

 

あらすじ


親譲りの無鉄砲で子供の頃から損ばかりしている坊っちゃんは、乱暴者で、家族から疎まれているが、下女の清だけは自分を気に入り、可愛がってくれる。
やがて、母が亡くなり、おやじと兄と三人で暮らすことになる。おやじは、坊っちゃんのことを、いつも駄目なやつだといい、兄とは仲が良くなかった。清は母が亡くなってから坊っちゃんを、いっそう可愛がるようになる。
おやじと死別後、兄から600円(兄は同時に清に与えるようにと50円を渡した)を渡され、それ以来会っていない。坊っちゃんは、東京の物理学校に入学。卒業してから八日目、母校の校長の紹介で四国の旧制中学校に数学の教師(月給40円)として赴任する。
 

赴任先に着いて、中学校へ来たら、もう放課後で誰もいない。宿直はちょっと用達に出たと小使が教えてくれるので、「山城屋」という宿屋に泊まることにした。
翌日、まず校長に挨拶をする。そこで、教育の精神について長いお談義を聞かされる。それを聞いて「到底あなたのおっしゃる通りにゃ、出来ませんこの辞令は返します」と辞退した。校長は、今のはただ希望である、あなたが希望通り出来ないのはよく知っているから心配しなくってもいいといわれ止められる。

教員控所で先生方に挨拶をした。そこで教頭の赤シャツや美術教師の野だいこ、数学主任の山嵐、英語教師の古賀と出会う。

挨拶が一通り済んだあと、学校を出て散歩する。宿屋に帰り、清へ手紙を書いた。山嵐が訪ねてきて、授業の相談をしたあと、下宿を紹介され、次の日に引き移ることにした。下宿にあいさつの帰りに、山嵐は通町で氷水を一杯奢ってくれる。

 


いよいよ学校へ出た。なんだか妙な心持のまま授業をした。下宿に帰ると、宿の亭主に書画骨董を勧められる。一週間ばかりしたら学校の様子もひと通りは飲み込めた。

そのうち、蕎麦屋に入って、天麩羅を4杯頼んだこと、団子を2皿食べたこと、温泉の浴槽で遊泳したことを生徒から冷やかされる。

 


初めての宿直の夜に寄宿生達から、嫌がらせを受ける。蒲団の中から、バッタが五六十匹はいっていたり、床板を踏み鳴らし、坊っちゃんの足を殴ったりする。
坊っちゃんは、寄宿生らの処分を訴えた。

 


赤シャツに釣りに誘われる。野だいこと三人で沖釣に行く。そこで、ゴルキを釣るが、面白くなくなって、仰向けになって大空を眺めていた。帰り際に、赤シャツに山嵐に気をつけないといけないと忠告される。坊っちゃんの前任者も山嵐に乗ぜられたと教えてくれる。

 


翌日、裏表のある奴から、貸しを作るのは嫌だと思い、山嵐に、ここへ来たとき奢ってもらった氷水代を返す。そして、山嵐は、下宿を出てくれと言い、喧嘩になる。
そのあと、寄宿生の処分についての会議があった。赤シャツや教員の大勢は事なかれ主義から教師全体の責任としながら、坊っちゃんに生徒の責任を転嫁しようとした。この時に筋を通す処分を主張したのは、仲違い中の山嵐だった。結局生徒達は坊ちゃんへの謝罪と厳罰を受けることになるが、宿直当日に坊ちゃんも温泉街へ無断外出をしたため、外食店への出入り禁止を言い渡される。

 


坊っちゃんは、下宿を引き払った。そのまま、うらなり君に下宿の相談に行く。その夜から萩野の家の下宿人となった。
やがて坊っちゃんは、赤シャツがうらなりの婚約者マドンナへの横恋慕していることを知る。
それから二三日して学校から帰ると、清から手紙が来る。坊っちゃんを心配していることと、お小遣いで十円くれる。
湯に行くと、うらなり君、赤シャツ、マドンナに会う。湯を出て散歩をしていると、赤シャツとマドンナを見つけて、二人の前に立つが、赤シャツはごまかして温泉の町の方へ引き返した。



ある日、赤シャツが話があるからうちに来てほしいと言ってきた。 
坊っちゃんの俸給の話があった。うらなり君の代わりの転任者の俸給から少し融通できるかもしれないとのことだ。うらなり君は希望して、日向の延岡に転任するとのことだった。
下宿に帰ってきて、婆さんにそのことを話すと、うらなり君は、ここにいたいと校長に頼んだが、聞き入れてもらえなかったという。
赤シャツがうらなりの婚約者マドンナへの横恋慕からうらなりをことを知り義憤にかられ、赤シャツからの俸給の話を断りに行く。

 


うらなり君の送別会のあるという日の朝、学校へ出たら、山嵐が突然、下宿を出てくれと言ったことを謝ってきた。
坊っちゃんは、山嵐の机の上にあった、一銭五厘をとって、自分の蝦蟇口のなかへ入れる。
うらなり君の送別会で、校長と赤シャツは、心にもない送別の辞を述べる。
山嵐は、宴席のみんなの前で、事なかれ主義から教師たちや、赤シャツを非難する。
そのうち、芸者が三四人はいって来た。赤シャツが急に立ち上がって、座敷を出にかかった。向うからはいって来た芸者の一人が、行き違いながら、笑って挨拶をした。そしてそのまま帰ってこなかった。
坊っちゃんは、うらなり君に帰ろうと誘い、送別会をあとにした。

 


祝勝会で学校が休みの日。練兵場で式があるというので、生徒を引率して参列する。
行きがけの曲り角で中学校と師範学校が喧嘩を始める。中学校が一歩譲り、その場はおさまった。祝勝の式は無事終わり、下宿へ戻った。清への返事をかきかけたが、結局うまく書けないので書くのをやめた。
下宿に山嵐が牛肉を持ってやってくる。山嵐と鍋を囲みながら話していると、赤シャツが温泉の町の角屋で芸者遊びをしているので、そこを押さえてへこまそうと言う。
そんな話をしていると、赤シャツの弟が祝勝会の余興を見に行かないかって誘いにくる。踊りを見物していると、向こうの方で、中学校と師範学校がまた喧嘩を始める。
坊っちゃんと山嵐は喧嘩を止めに入るが、巡査が来て、中学校と師範学校の生徒は引き上げる。坊ちゃんと山嵐だけが警察へ行って、署長の前で事の顛末を述べてから帰った。

 

十一
次の日、四国新聞に喧嘩騒動が載り、坊っちゃんと山嵐に対しての非難が書かれる。
学校の帰りがけ山嵐は、僕等を誘い出して喧嘩のなかへ、捲まき込こんだのは赤シャツだと教えられる。この騒動で山嵐が辞職に追い込まれることになってしまう。
坊っちゃんは、山嵐を辞職させるなら、自分も辞職すると校長に談判する。
山嵐は辞表を出し、坊っちゃんと山嵐は、赤シャツの不祥事を暴くための監視する。
ついに芸者遊び帰りの赤シャツと 腰巾着の野だいこを取り押さえる。当初の予定通り、夜明けに山嵐と芸者遊びについて詰問し、しらを切る彼らに天誅を加えた。
即刻辞職した坊っちゃんは、東京に帰郷。清を下女として雇い、街鉄の技手(月給25円)となった。

 

 

坊っちゃん (新潮文庫)

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